朝になればごみ収集車がごみステーションの前に停まり、収集員がテキパキと積み込みを行って颯爽と走り去っていく。手を振る子どもたちに応える姿も、地域では見慣れた光景です。そんな日常は、雪の日も猛暑の日も「当たり前」の維持に努める人たちに支えられています。
株式会社神岡衛生社の清水直樹さん(ごみ収集歴22年、写真右)と、有限会社吉城環境管理センターの端場政美さん(同17年、写真左)に、ごみ収集の仕事にかける思いを伺いました。
しみず なおき はしば まさみ
現状維持は、当たり前じゃない
──安全面に加え、日々地域を回るなかで意識していることは何ですか?
端場さん
まずは大きな声で挨拶すること。また、ごみステーションをきれいな状態に保つことも欠かせません。最近はカラスによる被害も増えていますが、ごみが散乱していたら放置せず、その都度片付けています。
清水さん
ネットを畳み、カゴを元の位置に戻すまでが収集員の仕事です。元通りに整えてから、次の現場へ向かいます。
──そうした心遣いが地域の日常を形づくっているのですね。一方、終わりのない仕事のようにも思えますが、お二人は何を目指し、どんな挑戦を続けているのでしょうか?
端場さん
ごみ収集が何のために、誰のためにあるのかといえば、その答えは紛れもなく市民の生活を守るためです。地域を取り巻く環境が変化するなかで、その日常をどれだけ維持できるか。そこに向き合い続けることが私たちの挑戦であり、目指す姿です。
ある時、ごみ袋にメモが付いていました。「いつもありがとうございます」「熱中症に気を付けてください」と。こうした声に触れるたびに、自分たちが目指す姿にきちんと近付いているのだと実感します。
清水さん
一人暮らしのご高齢者が増えるなか、個人宅を訪問して粗大ごみを回収する「ふれあい収集」の立ち上げは、地域課題に向き合う私たちにとって一つの挑戦でした。
端場さん
ごみを回収するだけでなく、おじいちゃん・おばあちゃんと顔を合わせ、様子を伺う機会にもなっています。「いつもご苦労さま」「ありがとう」──そんな言葉をかけていただけることが何よりの励みです。
収集中に市民からごみの分別について質問を受けた際には、丁寧でわかりやすい対応を心がけているという。(※分別方法の確認には、ごみ分別アプリ「さんあ~る」が便利です。)
小学校で環境学習の講師を務めた際に出会った当時4年生の児童が、のちに神岡衛生社へ入社してきたそう。「あの時の子が……」と感慨深い気持ちになったと話す
憧れが生む、環境への当事者意識
──ご高齢者だけでなく、地域の子どもたちへの働きかけにも注力しているとか。
清水さん
私たちは「環境戦隊エコレンジャー」を名乗り、保育園などで環境をテーマにしたヒーローショーを行っています。園児にとっては「レンジャーが来た」くらいの印象かもしれませんが、それをきっかけにペットボトルの捨て方一つでも行動が変わってくれたら嬉しいですね。子どもたちもまたヒーローとして、まずは自分にできることから環境を守ってほしいという思いを込めています。
端場さん
子どもたちは次世代を担う宝です。地域の子らにとって、私たちは「“誇り”あふれるヒーロー」とならなければならない──その思いを強く持っています。まずは身近な環境への興味を促し、「自分もやってみたい」という芽を育てる。決してなくなってはいけないこの仕事を未来へつなぐためにも、ちびっ子たちから憧れられる収集員であり続けます。
ごみだけ見ていられない、収集の仕事
──ごみの収集は何人で行っているのですか?
端場さん
およそ8名体制です。可燃ごみの収集車は3台あり、古川町を2台4名で担当し、宮川町と河合町は1台2名体制で交互に回ります。加えて、ペットボトルや缶などを回収する車両が1台あります。
清水さん
神岡町では可燃ごみの収集車が2台あり、不燃ごみの収集日には最大4台が稼働します。
──少人数で広いエリアを担当されているのですね。1日の収集はどのような流れで進むのでしょうか?
端場さん
朝礼後に車両点検を行い、8時半には収集を開始します。午後3時半までに収集したごみの搬入を終え、その後は終礼を行って1日の業務を終えます。
清水さん
通常の収集業務を終えた後、ご家庭を訪問して粗大ごみを回収する日もあります。地域の高齢化が進むなか、ご自身で施設に持ち込めない方も少なくありません。そうした予定や段取りも、前日の終礼で共有しています。
端場さん
特に宮川町・河合町では、ご高齢で一人暮らしをしている方も増えています。タンス一つ処分してほしいという声もあれば、一軒丸ごと片付けてほしいという相談もありますね。
──通常の収集業務に加え、地域の困りごとにも対応されているのですね。収集現場では、どのようなことに気を配っていますか?
清水さん
何より大切なのは、収集員自身と市民の安全を確保することです。道路脇に停車して作業を行うため、後方から追突される危険や、収集車を避けようとした歩行者が対向車と接触するおそれもあります。作業中は手元だけでなく周囲にも目を光らせ、見通しの悪い場所では声かけや誘導を行っています。
清水さん
他の地域では、過去に収集員や一般市民がごみを圧縮する投入口に巻き込まれる事故も発生しています。そうした事故を決して起こさないよう、新人が入った際には具体的な事例をとおして事故につながる行動を確認し、自分自身が怪我をしない・市民を危険にさらさないための安全教育を徹底します。
市民ライター 三代知香
目の前の日常を守りながら、変化する地域に向き合い、未来の当たり前を育てていく。お二人の姿からは、地域生活の根幹を担う誇りと、守り抜く覚悟が伝わってきました。
本誌では、プラスチック類の一括回収についても特集しています。地域の環境を守る一歩を、自分の行動から始めてみませんか。
