
優しくページをめくる音。
物語を語る声に、じっと耳を傾ける小さなまなざし――
読み聞かせの時間は、読む人と聞く子どもの心を結ぶ、かけがえのないひとときです。
子どもの頃に出会った物語は、言葉の力だけでなく、人を思いやる心や想像する力を育んでくれます。
広がりを見せている、家庭や地域での読み聞かせの輪。今号では、その魅力や効果、そして活動に関わる人たちの思いを紹介します。
読む人も聞く人も心豊かな時間
言葉の力を育てる
絵本には、豊かな表現がたくさん詰まっています。赤ちゃんは、語りかけの中で言葉を覚えていくといわれています。読み聞かせの後に、「これはキリンだよ。首が長い動物だね」「この赤くて丸いのはリンゴ。おいしそうだね」などと語りかけられることで言葉を覚え、自分の気持ちを言葉にする力も育っていきます。
読んでもらうことで、自然に生の声や、新しい言葉に触れ、表現が豊かになるのです。
想像する力を広げる
絵本の世界に触れることで、子どもたちは登場人物の気持ちや物語の続きに思いを巡らせます。「この後、どうなるかな」「この子はどんな気持ちだろう」。自分の中で場面を思い描く時間は、考える力や想像力を育む大切な経験になります。
テレビや動画と違い、自分の中でイメージを膨らませることができるのも、絵本ならではの魅力であり、楽しさでもあります。
人と人とのつながりが心の安らぎに
絵本は、一人で読むこともできますが、読んでもらうことで、より心の安らぎを感じることができます。読み聞かせは、子どもが大人と同じ時間を過ごす触れ合いの時間となり、子どもにとって大きな安心感につながります。また、読み手である大人も、絵本の世界観を感じながら、子どもと同じ時間を過ごすことで気持ちが落ち着き、心が豊かになります。
こうした絵本との出会いや、読み聞かせの機会は、家庭や地域の中でも広がりを見せています。市図書館では、絵本が一般書に次いで利用が多く、子どもたちの身近な読書活動を支えています。
| 令和5年度市図書館(室)貸出数(冊) | |
|---|---|
| 一般書 | 39,367 |
| 絵本 | 20,113 |
| 児童書 | 15,728 |
| その他 | 6,519 |
| 紙芝居 | 1,112 |
子どもたちに届ける おはなしの時間
子どもたちが見つめる先には、心を込めて絵本を読むボランティアの皆さんの姿があります。本市では、多くのボランティアが学校や地域で活動し、子どもたちへ絵本の楽しさを届けています。迫図書館を拠点に25年活動を続けている「だっこ・ラッコ」の富士原抄子さんに、読み聞かせの魅力や活動への思いを聞きました。

富士原抄子さん
絵本の楽しさを届けたい
私たち「だっこ・ラッコ」は、平成13年度の図書館ボランティア講座での出会いをきっかけに設立し、図書館でのおはなし会やブックスタートのお手伝いなど、絵本の楽しさを子どもたちに届ける活動を続けています。
読み聞かせをしていて一番うれしいのは、子どもたちの目がキラキラする瞬間を見ることです。最初は落ち着かない子も、おはなしが始まるとだんだん物語の世界に引き込まれていくんです。読んでいるうちに、みんながこちらを見てくれたときは、心の中で「やった!」とうれしくなります。
私たちは何より本が好きで、絵本が大好きなんです。本は心の栄養だと思っていますし、物語は人生の先生だとも思っています。だから、子どもたちにも本を好きになってもらいたいと願っています。
初めての絵本との出会いを大切にしたい
市が、生後4、5カ月の乳児健診で絵本2冊をプレゼントするブックスタート事業を実施していて、私たちは初回から参加しています。絵本に触れる機会や、絵本を通して親子が向き合うきっかけを届けていて、読み聞かせをして赤ちゃんが音やリズムを楽しんでいる様子を見ると、とてもうれしくなります。市の未来を担う子どもたちのために、これからも大切にしていきたい活動です。
今後も温かい輪を広げたい
どこの団体でも同じだと思いますが、活動を続けていくのは簡単ではありません。でも最近は、新しい読み聞かせ団体や、学校で朝の読み聞かせ活動をする仲間が増えてきました。同じ思いを持つ仲間が地域で活動しているのは本当にうれしいことです。これからも絵本を通して、子どもたちに読んでもらう喜びや物語の楽しさを届けていきたいです。
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家庭でも気軽に一冊 ― 今日から読み聞かせをはじめてみませんか ―

子どもや読む人が読みたい本、読みやすい本、絵がかわいいなど、好きな本を選んで、ぜひ気軽に始めてみましょう
- 短い時間で大丈夫
空いている時間や睡眠前の5分など、無理なく続けられる時間を見つけましょう。 - 子どもが選ぶ本を大切に
同じ絵本ばかりでも問題ありません。お気に入りの本を繰り返し読むことも成長につながります。 - 最後まで読めなくても大丈夫
途中で別のページを見たがることも自然なことです。 - 小学生にもぜひ
読んであげることで、感情や雰囲気を自然に受け取れるようになります。
絵本選びのヒント ― 図書館司書に聞きました ―
- 0〜2歳 「だるまさんが」(作:かがくい ひろし、出版社:ブロンズ新社)
最後まで聞けるかより「楽しかったね」という体験を大切にしましょう。 - 3〜5歳 「ねないこだれだ」(作・絵:せな けいこ、出版社:福音館書店)
言葉や考える力が育っていく時期です。「どうしてかな」「次はどうなるかな」と親子で会話を楽しんでください。 - 小学生 「おしいれのぼうけん」(作:ふるた たるひ・たばた せいいち、出版社:童心社)
物語の楽しさを味わえる時期です。主人公の気持ちに共感したり、応援したりして、絵本の世界に引き込まれていきます。
図書館からのお知らせ 絵本の世界へようこそ
迫図書館では、おはなし会を開催しています。絵本の世界で、一緒にワクワクしませんか。
おはなし会
【日時】第1・3土曜日/午前10時30分〜11時
赤ちゃんおはなし会
【日時】第4水曜日/午前10時30分〜11時
共通事項
【場所】迫図書館 白鳥ライブラリー・爽陽2階
【読み手】図書館ボランティア「だっこ・ラッコ」
※予約は不要です。どなたでも参加できますので、当日会場にお越しください
【問い合わせ】迫図書館 白鳥ライブラリー・爽陽 ☎0220(22)9820
「はじめての絵本セット」貸し出し
絵本を通じて親子で楽しい時間を過ごしてもらえるように、絵本セット(5冊)を貸し出しています。貸し出し中に破いたり汚したりすることを心配せずに利用でき、家族みんなで一緒に楽しめる内容です。ぜひご利用ください。
【対象】乳幼児の保護者や祖父母など
【貸出期間】2週間
※来館してA〜Eの5セットから選んでください
【問い合わせ】登米図書館 ☎0220(52)5330
絵本から広がる優しい時間
「絵本を開く時間が、皆さんにとって優しいひとときになればうれしいです」。そう語るのは、迫図書館で図書館司書をしている野家文恵技術主幹。日頃から子どもたちと絵本に接する司書の視点から、読み聞かせの魅力や家庭で大切にしたいことを聞きました。

「好き」の気持ちを大切に
「この本が好き」という気持ちは、子どもにとってとても大切なものです。同じ絵本を何度も読んでほしいと持ってくることがありますが、それは物語や言葉を楽しんでいる証拠です。「またこの本?」と思わずに、その気持ちを受け止めてあげてください。好きな一冊を楽しむことも、言葉や想像力を育て、本への親しみにつながっていきます。
楽しみ方は十人十色 一人一人の個性を大切に
保護者の皆さんからは、「どんな本を選べばいいですか」「最後まで聞いてくれません」といった相談をよく受けます。でも、一人一人興味や成長のペースは違うので、正解は一つではありません。最後まで読めなくても大丈夫です。ページを行ったり来たりしながらでも、一人一人のペースで絵本を楽しんでいます。大切なのは、親子で一緒に絵本を開く時間です。
絵本と過ごすひととき
読み聞かせに特別な準備は必要ありません。短い時間でも、一冊だけでも大丈夫です。親子で一緒に物語を楽しむことが大切で、その積み重ねが、子どもの言葉や想像力を育み、温かな思い出を残してくれます。気負わず、それぞれの家庭らしい読み聞かせの時間を楽しんでいただけたらうれしいです。
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まなざしのその先に ―
ゲームやスマートフォン、動画サイトが日常に溶け込み、子どもたちがデジタル画面に触れる時間が増えている今。そんな時代だからこそ、本を開いた時の感触や、紙の香り、そして、ページをめくりながら広がる絵本の世界は、暮らしの中にほっとした安らぎと優しい時間をもたらしてくれます。
読み聞かせは、絵本の世界を声で伝え、子どもたちに優しさあふれる時間を届けてくれます。誰かの声に包まれて、物語の中で笑ったり、ドキドキしたりする感覚は、子どもたちの豊かな想像力を刺激し、心を優しく満たしてくれます。
そして、同じ空間で一緒に過ごすこの時間は、世代や背景を超え、子どもも大人も心をほっと和ませる瞬間です。
絵本を通して生まれる笑顔や弾む会話は、これからの登米市を担う子どもたちはもちろん、地域で見守る大人の心も豊かにしてくれるはずです。暮らしの中に絵本が寄り添い、読み聞かせの輪がこれからも広がっていくことを願っています。
