「現状を変える」という難しい決断 ―
近年、人口減少や物価高騰の影響により、全国的に「病院の赤字経営」が深刻な社会問題となっています。この問題は、医療の質や地域社会の持続性にも影を落としています。では、私たちの地域では、どのような状況にあるのでしょうか。今回の特集では、地域医療を取り巻く現状と課題を明らかにするとともに、将来に向けた取り組みについて要点をわかりやすくお伝えします。
全国公立病院の令和6年度決算状況(赤字・黒字の割合)
<出典>公立病院の現状と課題について(総務省)
病院数は令和7年3月末現在
- 赤字:703/844病院(83.3%)
- 黒字:141/844病院(16.7%)
■問 健康福祉部 健康医療政策課 ☎68-2402
1 湖北地域の医療環境
4病院による充実した医療
私たちが住む湖北医療圏は、全国的に見ても非常に優れた医療環境が整った地域です。市立長浜病院、長浜市立湖北病院、長浜赤十字病院、セフィロト病院の4つの病院が、それぞれの特色を生かし地域医療を支えています。なかでも3つの公立・公的病院は、24時間体制で重篤患者を受け入れる救命救急や、高度な循環器医療などの先進医療を担い、地域の暮しを支える重要な役割を果たしています。
湖北地域の公立・公的病院の病床機能・役割等
❶市立長浜病院 / ❷長浜市立湖北病院 / ❸長浜赤十字病院
| ❶ | ❷ | ❸ | ||
|---|---|---|---|---|
| 病床機能 | 高度急性期 | ● | ● | |
| 急性期 | ● | ● | ● | |
| 回復期 | ● | ● | ● | |
| 慢性期 | ● | |||
| 病院の役割 | 地域医療支援病院 | ● | ● | |
| へき地医療拠点病院 | ● | |||
| 救命救急センター (三次救急) | ● | |||
| 地域周産期母子医療センター | ● | |||
| 地域がん診療連携拠点病院 | ● | |||
| 精神科応急入院指定病院 | ● |
高度で専門的な医療を提供
市立長浜病院と長浜赤十字病院は、生命の危機に直面する重篤な患者に対し、迅速かつ専門的な医療を提供する高度急性期の機能を担っています。その病床数は、人口10万人あたりで見ると、他地域と比較して非常に充実していることが特徴です。
人口10万人あたりの高度急性期病床数
<出典>令和6年度病床機能報告(厚生労働省)
| 人口規模 | 病床数(床) |
|---|---|
| 全体平均 | 78 |
| 30万人以上 | 139 |
| 25〜30万人 | 58 |
| 20〜25万人 | 79 |
| 15〜20万人 | 56 |
| 10〜15万人 | 39 |
| 湖北(15万人) | 196 |
国内20位の快挙!
市立長浜病院は、アメリカの国際ニュース週刊誌「ニューズウィーク」が発表したアジア・太平洋地域の優れた病院ランキングで、循環器内科が2年連続で100位以内にランクインしました。2025年度のランキングでは国内20位、自治体病院としては2位という快挙を達成しました。

2 取り巻く状況の変化
人口減少等による病院経営の悪化
人口減少による患者数の減少に加え、物価高騰などの影響も受け、全国844の公立病院のうち83.3%が赤字経営となっています。その結果、地域医療の維持は全国的に深刻な課題となっています。本市においても、市立2病院の赤字額は、令和7年度決算で約14億円に達する見込みです。令和8年6月1日から診療報酬が改定され、一定の増収が期待されるものの、今後も厳しい経営状況が続く見通しです。
市立2病院の経常収支
<出典>経営改善実行計画(令和7年7月策定)
*R5-6:実績値 / R7:決算見込値&(計画値) / R8-11:(計画値)
| 年度 | 経常収支(億円) |
|---|---|
| R5 | -11.5 |
| R6 | -22.4 |
| R7 | -14.0 (*R7:臨時的収入(補助金)4億円含む) ※計画値(-22.4)よりも改善 |
| R8 | -15.1 |
| R9 | -14.8 |
| R10 | -15.6 |
| R11 | -11.5 |
現状のままでは将来の医療を守ることができない
市は地域医療を守るため、病院事業への財政支援を検討していますが、市の財政も厳しく、支援は基金の取り崩しによる対応が前提となります。そのため、無制限な支援は不可能であり、持続可能な解決策が求められています。
さらに、この地域の医師確保に協力いただいている大学病院からは、医師の勤務環境の確保のため、診療科の重複解消に向けた病院機能の再編を強く求められています。地域内で2つの高度急性期病院が競合する現状が続く場合、医師の確保や病院経営の面で課題が深刻化し、現在の優れた医療環境を維持することは極めて困難な状態です。
3 国の動き
急性期拠点機能を一つに集約
厚生労働省が示した「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」では、医療ニーズが変容する2040(令和22)年を見据え、病院ごとの役割分担をより明確化していく方針が示されました。人口が少ない地域で急性期医療の拠点が複数存在し、医師や症例数が分散すると、医療従事者の働き方が非効率になり、24時間対応の救急や緊急手術体制の維持が困難になります。それを防ぐため、国は人口30万人未満の地域において、「急性期拠点機能」を一つに集約する方針を提示しています。現在15万人の人口が今後さらに減少していく中で、市立長浜病院と長浜赤十字病院が競合する湖北地域は、まさにこの課題に直面しています。
湖北医療圏人口・DPC患者数推移
<出典>医療需給総覧version1.0(㈱日本経営)
※DPC=患者の病気や治療内容を分類し、それに応じた治療費が定額で算定される制度のことで、特に急性期病院で広く採用されています。
| 年 | 人口(万人) | DPC患者数(人) |
|---|---|---|
| R2 | 15.1 | 11,423 |
| R7 | ||
| R12 | ||
| R22 | 12.4 | 10,715(約12%減) |
| R32 | 10.9 | 10,023(約28%減) |
4 市の動き
地域の医療を守る議論スタート
これらの課題に対応するため、令和8年4月に「長浜市病院再建・再編推進本部」を設置しました。本部では、市立2病院の経営再建と地域内の病院機能の再編について同時に検討を進め、地域医療の未来を守るための重要な議論を本格的に開始しました。
人口減少を見据えた前向きな病院機能等の見直し
1回目の会議では、市立長浜病院の機能等に関する3つの選択肢が例示され、今後の議論の「たたき台」として共有されました。今後はこれらの選択肢に加え、その他の可能性も視野に入れ、機能、規模や経営形態などについて幅広く検討を進めていきます。市民の皆さまをはじめ、医療現場の関係者や滋賀県などの関係機関から十分に意見を伺いながら、地域医療の未来のあるべき姿を見出していきます。
「15年後の医療をどのように守っていくか。」を皆さまとともに考えるための選択肢
| 現状 | 選択肢(1) | 選択肢(2) | 選択肢(3) | 選択肢(4) | |
|---|---|---|---|---|---|
| 概要 | 現状維持 | 得意分野に特化し病院規模を適正化 | 高齢者救急医療に移行し長浜赤十字病院と機能分担 | 長浜赤十字病院と経営を一体化(指定管理導入) | 〇〇〇〇〇 |
| 病院規模 | 現状維持 | 縮小 | 縮小 | 調整による | 〇〇〇〇〇 |
| 病院機能 | 高度急性期 | 高度急性期 | 高齢者救急 | 高度急性期 | 〇〇〇〇〇 |
| 経営形態 | 2経営主体 | 2経営主体 | 2経営主体 | 1経営主体 | 〇〇〇〇〇 |
| 診療科 | 幅広い診療科 | 絞り込み | 絞り込み | 2つの病院で幅広い診療科 | 〇〇〇〇〇 |
| 医療の持続性 | 長浜赤十字病院との競合が続き、両病院ともに消耗の可能性 | 長浜赤十字病院との機能分担が実現すれば向上、ただし調整は難航の可能性 | 長浜赤十字病院との機能分担が実現し、持続性向上 | 長浜赤十字病院との競合に伴う消耗は解消し、持続性向上 | 〇〇〇〇〇 |
| 経営改善効果 | 市立2病院で年間約12〜16億円の赤字見込み | 現状維持よりは一定改善 | 移行期に相当の負担が発生、以降の赤字は抑制見込み | 統合効果で現状維持よりもやや改善 | 〇〇〇〇〇 |
市が提示した(1)から(3)の選択肢、そしてそれ以外の可能性を示した(4)について、ぜひ皆さまのご意見をお聞かせください。
ご意見BOX 7/31(金)まで
