秋の特産物を通して知る、つくる人の思いと学校給食の取り組み
秋の味覚といえば、何を思い浮かべますか。今回、町内の小中学生に好きな秋の味覚を聞きました。
町では、さまざまな農産物が生産され、学校給食にも町の食材が届けられています。農産物をより良く育てようと工夫を重ねる生産者と、旬の食材を取り入れながら献立を考える栄養教諭。町の食材がこどもたちのもとへ届くまでには、さまざまな人が関わっています。
こどもたちが選んだ秋の味覚。その食材には、どんな工夫や思いが込められているのでしょうか。生産者や栄養教諭に話を聞きながら、筑前町の食にまつわる思いを紹介します。
量より質を貫き、旬の恵みを届ける 地域で愛される果樹栽培
町内で梨やぶどうを栽培する樹梨園 4代目 井上さんは、果物づくりで「量より質」を大切にされています。
梨は4代にわたって受け継がれてきました。1本の木にならせる実の数をあえて制限し、一つ一つに栄養が行き渡るようにするほか、枝を多くしすぎないことで、日光が実に当たり、風通しも良くなるよう工夫しているとのこと。
ぶどうは、ピオーネやシャインマスカットを中心に栽培されています。ピオーネは甘さと酸味のバランスが特徴。シャインマスカットは18年ほど栽培を続けており、現在では園で最も人気のあるぶどうだそうです。
梨は7月から11月にかけて品種が移り変わり、季節を通してさまざまな味を楽しめます。人気のシャインマスカットも10月いっぱい頃まで味わえるそうです。しかし、近年は秋の味覚というより、夏の味覚へと時期が早まっているように感じるとのことで、旬のおいしい時期を見逃さず、味わってほしいとのこと。
農業を続ける中では、天候や災害、害虫など、さまざまな困難もあります。それらを乗り越えて無事に収穫できたとき、そして消費者から「おいしかった」と喜んでもらえたときに、大きなやりがいを感じるそうです。
直売所を訪れたこどもたちに果物を食べてもらうこともあり、こどもたちが笑顔いっぱいで食べる姿から、元気をもらっているとのこと。今回、こどもたちに梨やぶどうが選ばれたことについても、「とてもうれしい」と笑顔。
「量より質。これは一番こだわりです。欲を出すといいものは出来ません」と井上さん。「おいしかった」と言ってもらえることを励みに、これからも地域の農業を守っていきたいと話されました。
美味しいぶどう・梨 見分け方!
梨
・肌がつるつる
・赤みが強いほど甘い
ぶどう
・粒の張りがある
・軸が黒くなっていない
シャインマスカット
・少し黄色みがかっている
どれも、甘みが感じにくくなるため冷やしすぎには注意!
町内の小・中学生154人に聞きました 一番好きな秋の食べ物 TOP3
1位 ぶどう 45人
「ぶどう推し」のみんなから農家さんへのメッセージ
- いつもおいしい食べ物をありがとうございます。これからも食べる時はつくってくれた農家さんたちに感謝して食べます。
- 毎日おいしく食べています。おふろ上がりに食べる、冷たいぶどう最高!!
- 毎年旬の時期になるとそろそろぶどうが食べられる時期かなとわくわくします。
2位 梨 38人
「梨推し」のみんなから農家さんへのメッセージ
- なしは甘くておいしいです。作ってくれてありがとうございます。
- いつもおいしい果物や農作物をつくってくれてありがとうございます。私はすきな食べ物の時期になるととてもわくわくしてきます。いつもあつい中つくってくれてありがとうございます。
2位 さつまいも 38人
「さつまいも推し」のみんなから農家さんへのメッセージ
- いつもおいしい食べ物を育ててくれてありがとうございます。私はさつまいもが好きでいつも秋になると食べます。これからもがんばってください。
- 夏の暑いときも秋や冬の寒いときも休まずおいしい野菜を育ててくれてありがとうございます。これからも感謝をしながら残さずいただきます。
皆さん、ご協力ありがとうございました。紙面ではすべてをご紹介できませんでしたが、こどもたちからは、町の特産物を楽しみにする声や、農家の皆さんへの感謝の気持ちがたくさん寄せられました。
地域のおいしさをこどもたちへ こだわりが詰まった筑前町のさつまいも
町内でさつまいもを栽培する金子さんは、「紅はるか」という品種を中心に、地域に根ざした野菜作りに取り組まれています。
金子さんが大切にしているのは、苗選びです。以前、自分で苗を作ってみたことがあるそうですが、つるばかりが伸びて、芋が十分に育たなかったとのこと。その経験から、質の良いさつまいもを育てるためには苗選びが大切だと考え、現在は鹿児島の農家から苗を仕入れているそうです。
また、金子さんによると、この地域は昔から「おいしいさつまいもが採れる」と言われてきたそうです。田んぼ1枚隣でも土が違うほど、土地によって土質が異なるといいます。金子さんのさつまいもは肥料を使わず、農薬もできる限り使わない方法で栽培されています。また、収穫の作業には機械を取り入れ、作業の効率化と負担軽減の工夫もしています。
さつまいもは、収穫後、でんぷんが糖に変わることで甘みが増していきます。収穫したばかりのものよりも、適切に保存しておくことで甘みが増していくのも特徴の1つ。家庭で保存する場合は、密閉せず、風通しのよい涼しい場所に置いておくのがコツだそうです。
金子さんが育てたさつまいもは、町内の小中学校の給食にも使われています。給食から注文が入れば、できる限り出荷するようにしているとのこと。こどもたちから直接感想を聞く機会は多くありませんが、近所の人やこどもの友達から「給食で食べたさつまいもがおいしかった」と耳にすることが励みになっているそうです。
「やっぱり、食べてもらって『おいしい』と言ってもらえるのが一番うれしい」と金子さん。筑前町の恵まれた土地で育った、おいしいものをこどもたちに食べてもらいたいという思いを持ちながら、町の農産物の魅力をもっと多くの人に知ってもらいたいと話されました。
学校給食の現場 給食から知る筑前町の豊かな恵み
町の学校給食では、主食である米をはじめ、大豆や筑前クロダマル、きゅうり、人参、玉ねぎなど、筑前町産の食材がほぼ毎日登場しています。特に、農作物を多く取り入れていることが特徴とのこと。
栄養教諭の池尻さんによると、毎月の献立を考える際には、生産者から「この時期にはこの食材が収穫できる」といった情報を聞きながら、旬の食材を使った献立を作成しているそうです。天候によって収穫時期や収穫量が変わることもありますが、生産者が「こどもたちが食べる給食のために」と計画的に食材を作ってくれることで、毎日の給食を作ることができているといいます。
筑前町産の食材を給食に取り入れることは、地域の豊かさを知るきっかけにもなります。さらに旬の食材を味わうことで、季節の移ろいや地域の食文化などを伝えていくことも給食の大切な役割であり、こどもたちへの食育にもつながると考えているとのこと。また、給食で食べている食材を、身近な人が作っていることもあります。誰が作っているのかを知ることで、こどもたちが食べ物や地域に、より関心を持つきっかけになってくれればとのこと。
一方で、こうした食材が日常的に給食に取り入れられているので、こどもたちにとっては「当たり前」になってしまっているように感じることもあるそうです。「筑前町には、実はこんなに豊かな食材がある」ということを、もっと知って味わってもらうことが、これからの課題だと話します。
「給食で提供できる食材には限りがあります。ぜひ家庭でも地域の食を味わってほしい」と池尻さん。給食だけでなく、家庭でも筑前町の食材を味わうことが、こどもたちが地域の食を知るきっかけになります。
食を知る、町を知る
筑前町には、梨やぶどう、さつまいもをはじめ、さまざまな農産物があります。その一つ一つが、決して当たり前に食卓へ届いているものではなく、生産者が手をかけ、大切に育てているものです。
そんな町で育った農産物を、こどもたちは給食を通して味わっています。町の食材を日々の給食で味わえる環境があることは、食べ物や地域を知るうえで大切な経験の一つです。
自分たちが暮らす地域でどんな農産物が作られ、身近な食事に取り入れられているのかを知ることは、町を身近に感じるきっかけにもなります。これは、筑前町ならではの豊かさともいえます。
その豊かさを、給食だけでなく、家庭でも話題にしたり、味わったりする。日々の食事を通して町の食に触れる機会は、学校の外にもあります。皆さんも、普段食べているものから、自分たちが暮らす筑前町に目を向けてみませんか。
