「あの道、走りやすかったな」と覚えている道はありますか。でこぼこや揺れのある道は気になるのに、スムーズに走れた道ほど、案外記憶には残らないものです。
そんな「記憶に残らない」乗り心地をつくる、株式会社房村組代表取締役・勝野靖之さん(写真左)と、株式会社サンロード常務取締役・濱口俊仁さん(写真右)。道路舗装の仕事に携わって、それぞれ32年、24年になるお二人に、道路を直す技術や、滑らかな乗り心地を生み出す工夫について伺いました。
傷みの原因から探る、道路の直し方
──道路舗装では、具体的にどのような工事が中心ですか?
濱口さん:
新しく道路をつくる工事もありますが、現在は傷んだ舗装を直す修繕工事が中心です。
一般的なのは、傷んだアスファルトの表面を5センチほど取り除き、新しいアスファルトに打ち替える方法。傷みが深い場合は、10センチほどの深さまで直します。
──5センチ直すのか、10センチまで直すのかは、どのように判断するのでしょうか?
勝野さん:
事前に、ひび割れの程度や、車が同じ所を通ることでできる溝状のへこみ、路面の平らさなどを調べます。そうした状態を見ながら、表面だけを補修するのか、より深い所まで打ち替えるのか、あるいは古い舗装の上から重ねるのかを判断します。
濱口さん:
道路の状態は、機械を使って数値でも調べますが、経験を重ねると、見ただけで傷みの具合がわかることもありますね。
──経験によって判断にも差が出るのですね。
勝野さん:
そうですね。加えて、直し方を決めるには、傷みの程度だけでなく、なぜ道路が傷んだのかも調べます。
大型車両が増えたのか、舗装の下の土台が弱くなっているのか。原因によって直し方が変わるので、そこまで突き止めます。例えば、大型車両が多く通る道路なら、その通行に耐えられる材料や構成を考えます。
機械だけではつくれない、滑らかな道
──直し方が決まった後、実際の工事はどのように進み、どんな技術が求められますか?
勝野さん:
古い舗装を取り除いた後、専用の機械で新しいアスファルトを敷きならし、ローラーで締め固めます。特に技術が必要なのが、平らに仕上げることです。
勝野さん:
舗装に使う機械をひと通り扱えるようになり、一人前といわれるまでには、10年はかかると思います。さらに、平らに仕上げるには、壁や側溝、玄関、店舗の出入口など、機械だけでは合わせられない部分を、アスファルトをならすレーキという道具やスコップを使って、人の手で細かく調整します。
──機械を扱う技術と、細やかな手作業が組み合わさり、乗り心地につながるのですね。
濱口さん:
そうですね。ボコボコせず、スムーズに走れることが大切です。
濱口さん:
水がたまりにくく、水はねも起こりにくい。気持ちよく走れる道が理想ですね。
条件を読み、最短の段取りを組む
──条件によって、工事の難しさは変わりますか?
濱口さん:
はい。特に冬は気温が低く、アスファルトが早く冷めます。温かいうちに敷きならして締め固める必要があるため、材料を途切れさせないことが重要です。そのため、普段よりダンプの台数を増やして運ぶこともあります。
勝野さん:
場所でいうと、交通量が多い所ですね。道路工事には必ず交通規制が入るので、規制の期間をできる限り短くするため、施工の段取りを入念に考えます。昼間を避けて夜間に施工したり、交差点では車を通しながら施工できるよう範囲を細かく分けたりします。
──通行止めにあたって、道路沿いに住む方とのやり取りもあるのでしょうか?
勝野さん:
工事前に一軒ずつ訪ね、予定や要望を伺います。「10時に病院へ行きたい」という方がいれば、その時間に出られるよう計画します。
濱口さん:
家の前に車を置けなくなる場合は別の駐車場を用意し、歩行者が安全に通れるよう臨時の通路をつくることもありますね。
勝野さん:
道路は皆さんが毎日使うものです。工事をすると生活を一時的に止めてしまうので、こうした調整は欠かせません。
──どんなところにやりがいを感じますか?
濱口さん:
路面がきれいに仕上がり「これで皆さんに快適に使ってもらえる」と思えたときです。市民の方から「きれいになりました。ありがとうございます」と言ってもらえるのも嬉しいですね。
勝野さん:
何もない所に道ができ、道ができれば、そこにまちができます。道路はなくてはならないものです。この仕事に携われた32年は、非常に充実したものでした。誇れる仕事です。
取材の終盤「飛騨市の道は走りやすいと思いますか?」と逆に問いかけられました。
すぐに答えられずにいると「『ここの道路、きれいだな』って、あまり思わないでしょう。たぶん、そういうことなんですよ」と、ひと言。
毎日の道を、何事もなく走れること。その当たり前を、職人の技術と細やかな仕事が支えています。
市民ライター 三代知香
