実験代表者の関谷洋之さんにお伺いしました!
今回研究でどのような兆候をとらえたのでしょうか?
宇宙の長い歴史の中では、数え切れないほどの星が寿命を迎えて「超新星爆発」を起こしてきました。その大爆発のたびに放たれた「ニュートリノ」は、当時の情報を保ったまま今も宇宙を漂う「タイムカプセル」です。今回、スーパーカミオカンデは約5000日分のデータから、世界で初めてこの「超新星背景ニュートリノ」という過去からのメッセージの兆候を捉えました。星々がどう生まれ、私たちの身体を作る炭素や酸素などがどう作られてきたのか、宇宙の歴史を解き明かすための大きな一歩です。
神岡町ではいつからどんな研究をされているのですか?
我々の近くの単独の星の爆発によるニュートリノは前身のカミオカンデで1987年に捉えられましたが、はるか遠方からの蓄積である超新星背景ニュートリノの検出は、1996年のスーパーカミオカンデ観測開始時からの長年の悲願でした。本年5月にはスーパーカミオカンデの30周年記念シンポジウムを開催しましたが、まさにこの約30年にわたる観測の歴史が結実したものです。特に2020年からタンク内の水に硫酸ガドリニウムという物質を溶かし、極めて高い精度でノイズと信号を見分ける独自の技術が今回の成果につながりました。
研究で苦労されたことを教えてください
この超新星背景ニュートリノの信号は非常に微弱なため、ノイズを取り除くことが最大の壁でした。そこで硫酸ガドリニウムを導入しましたが、これは一筋縄ではいきませんでした。水タンクの改修工事に加え、硫酸ガドリニウムの溶解手順の確立、そして新たな水循環純化装置の開発と運用など、巨大な実験装置と水質を常に完璧な状態に維持し続けるという、皆で力を合わせての地道な努力が不可欠でした。
今後の思いや抱負を教えてください
今回の結果は99.5%の確率で正しいという「兆候」の段階ですが、宇宙の元素がどう作られてきたのか、私たちを含めた物質の起源の歴史を紐解く決定的な手がかりです。宇宙のタイムカプセルからの確実なメッセージとして読み解くため、引き続きスーパーカミオカンデでの観測を継続します。そしてハイパーカミオカンデの完成後はさらなる感度向上を目指します。
2024年よりスーパーカミオカンデ実験代表者 関谷洋之氏(東京大学宇宙線研究所 准教授)からのメッセージ
今回の成果は、長年にわたりスーパーカミオカンデを温かく支えてくださった飛騨市民の皆さんのご理解があってこそのものです。皆さんの暮らす飛騨の地下1,000mで、宇宙の観測を行っていること、そして宇宙の歴史を解き明かす最先端の研究成果が生まれていることを、改めて感じていただければ嬉しいです。今後とも応援よろしくお願いいたします。
