2-1 策定の経緯と目的
玄海町では、これまで「総合計画」と「総合戦略」をそれぞれ策定・運用してきました。
総合計画は、まちの基本的な方向性を示す最上位の計画です。将来の「あるべき姿」を描き、その実現に向けてあらゆる分野にわたる施策を総合的・体系的に整理します。行政運営の指針であるとともに、町民・事業者・行政が一体となって取り組むための共通の目標を定めるものです。
総合戦略は、総合計画の理念を踏まえながら、特に人口減少や地域経済の縮小といった重要課題に的を絞り持続的に発展していくための具体的な方向性を示す実行計画です。産業振興や雇用の創出、移住・定住の促進、子育て・教育環境の充実など地域の強みを生かした戦略的な施策を展開し、町のにぎわいと活力を次世代へつなげていくことを目的としています。
しかしながら、両計画の内容には地域づくりや人口減少対策など重複する部分が多く、施策の整理や進捗管理が複雑になるといった課題がありました。また、町民にとっても将来に向けた方向性が分かりにくい状況であったことや限られた人員・財源の中で計画を二重に策定・運用することは行政の負担となっていました。
このため、次期計画について総合戦略に統合することとしました。
これにより、町の将来像の実現と人口減少への対応を一体的に位置づけ政策の重複を避けながら効果を最大化し、分かりやすい形でまちの将来ビジョンを示します。
「まちの将来ビジョン」を実現するため、「分野別目指す姿」に向けた取組みを進めます。
2-2 玄海町みらい計画とは
『みんなで一緒に玄海町の未来をつくっていくための道しるべ』です。
まちづくりは行政だけが行うものではなく、町民のみなさん一人ひとりが大切な担い手です。地域の団体や事業者、専門機関など、さまざまな人たちが力を合わせて取り組むことで、玄海町の未来をつくっていきます。
「玄海町みらい計画」は、町の“最上位の計画”です。玄海町がこれから目指す姿(ビジョン)と、その実現に向けた方向性を示しています。
この計画をもとに、教育・福祉・防災・産業などの分野で具体的な計画や取組みを進め、多様な人や組織がそれぞれの役割を担いながら、町の活力を高め、好循環を生み出すことを目指します。
また、取り組みは一度決めたら終わりではなく、進み具合を定期的に確認し、社会の変化や町の状況に合わせて見直しを行いながらよりよい形へと改善していきます。
つまりこの計画は、「みんなで一緒に玄海町の未来をつくっていくための道しるべ」です。
町民のみなさんとともに、一歩ずつ確実に前に進めていきます。
玄海町みらい計画は、みらい方針の考え方を踏まえて各取組み、計画を進めていきます。
■玄海町みらい計画の構成
| みらい方針 | 将来目指す町の姿として「まちの将来ビジョン」を示し、町全体がまちづくりを進めるための大きな方向性を示します。 |
| 基本戦略 | みらい方針で掲げる「まちの将来ビジョン」の実現に向け、分野ごとの目指す姿と、重点的に取り組む重要テーマ(重点施策の方向性)を示します。 |
■玄海町みらい計画の期間
玄海町みらい計画は、みらい方針が令和8(2026)年度から令和15(2033)年度までの8年間、基本戦略は前期が令和8(2026)年度から令和11(2029)年度までの4年間、後期が令和12(2030)年度から令和15(2033)年度までの4年間とします。
■玄海町みらい計画の進捗状況の管理
玄海町みらい計画の成果や進捗を客観的に見ることができるように、KGI(目標を達成するために最も重要な指標)を設定しました。これら指標の達成を意識しながら施策・事業に取り組み、実施計画に従って着実に事業を実行していきます(Do)。各指標に対する進捗状況や実績値は毎年度定点観測し、計画どおりに進まなかった場合はその要因を評価・検証します(Check)。さらに、どの施策を重要視すべきか、より効果的な事業を展開できないかなど、施策の重点化や事業の見直しを行い(Action)、計画に反映させます(Plan)。
2-3 玄海町みらい計画の特色
(1)町民の声を幅広く取り入れた計画・戦略
玄海町で暮らす一人一人が「玄海町いいね!」と思えるまちづくりを進めていくにあたっては、玄海町にかかわるすべての人々が一丸となってまちづくりを進めていく必要があります。そのため、町の実態を把握するために町民や町内企業を対象としたアンケート調査やワークショップ等を実施し、計画や戦略に町民の声を反映するように努めました。
町民を対象としたワークショップでは、参加者同士がテーブルを囲み、町民視点での“町の幸せ”や“必要な取組み”について考えました。付箋やペンを使いながら自由に意見を出し合い、町長も交えた意見交換会では、参加者から「それよかね!」といった声も聞こえる和やかな雰囲気でした。
玄海町で暮らす女性の視点からまちづくりを考えた女性部会では、子育てや働き方、地域コミュニティ等、日常生活に根ざした町の良いところや課題が語られ、参加者同士の共感や新たな気づきが生まれる活発な意見交換の場となりました。
(2)4つの重要テーマ
町の現状や社会潮流を踏まえて、玄海町みらい計画では、4つの重要なテーマを整理しました。
1 女性や若者に選ばれる町に向け、『未来の子育て世帯』を増やす政策の加速化
婚姻率が高く、合計特殊出生率も一定数確保できていますが、出生数・若年女性が少ない状況です。若年女性の流出抑制と玄海町が居住先として選ばれることが必要です。
また、進学等で一度町外に転出してしまう人が、町に戻ってきたくなる環境づくりが必要です。
町外への流出の原因は、「住まいの選択肢が少ない」ことも一因と考えられます。
加えて、「未来の子育て世帯」を増やすために、若者への支援を厚くし、転出抑制、U・Iターン獲得につなげることが必要です。
2 地域社会の活力と成長を支える
電気業の関連産業を中心に、大きな雇用を生む強みを活かし、労働者が住み、町内で消費する職住近接への誘導が必要です。
一方、電気業に頼り過ぎると社会情勢によって、大きな打撃を受ける可能性があるため、社会情勢に影響されにくい基幹産業である地場産業(農業・漁業 等)の活性化を図り、地域産品で外貨を稼ぐことも必要です。また、農業の総生産額は町内産業において上位であり、地域経済循環の向上にとっても重要となります。
さらに新たな産業の開拓、基幹産業の発展および持続を通じて町外に転出した子どもたちが町に戻ってくることができる仕事づくりが必要です。
3 デジタルを武器とした地域課題解決
デジタル技術を活用した地域課題の解決が推進されている社会潮流を踏まえ、この「機会」を玄海町でも活かしていくことが大切です。
デジタルを活用することで、行政サービスの高度化、町民に使いやすい役場への変革、地域産業の人手不足の補完、働き方の変革、情報発信力・伝達力の強化などにつなげ、住民が便利で快適な生活を享受できる環境を作ることが必要です。
4 玄海町ならではの「Well-Being」の追求
家族や友人と笑顔で過ごせるとき、医療や福祉を安心して受けられるとき、自然と調和した暮らしを楽しめるとき――その瞬間「いいね!」と感じる状態こそが、玄海町におけるWell-Beingのかたちです。
玄海町で生活することで感じることのできる「いいね!」を増やすことは、移住・定住にも好影響になると考えます。また、「やりたいことを応援してくれる」ことも、まちづくりの原動力となり、今よりもっと「いいね!」となるまちにつながります。
町民・町職員・町内企業等と一緒に玄海町版Well-Being「いいね!」を追求し、実現に向けた取組が必要です。
(3)Well-Beingの考え方を取り入れた計画・戦略
町民一人ひとりの実感を大事にし、どのような状態になれば目標が達成されたと言えるのかをわかりやすく整理するとともに、計画の進捗状況がわかりやすく、取り組み意欲が掻き立てられる計画になるよう努めました。
Well-Beingの概要について
■Well-Being(ウェルビーイング)とは
「Well-Being」とは、単に経済的な豊かさや物質的な充足を指すのではなく、人々が心身ともに健やかで、社会とのつながりを持ちながら、自分らしく幸せに生きられる状態を意味する概念です。世界保健機関(WHO)も健康の定義の中で「身体的、精神的、社会的に良好な状態」としてWell-Beingを重視しており、近年では国や自治体の政策形成においても重要な視点として位置付けられています。
■なぜWell-Beingの考え方が必要なのか
わが国では、人口減少や高齢化の進展、地域経済の縮小など、まちづくりに大きな転換が迫られています。従来は経済成長や社会資本の整備など量的な指標を中心に政策が進められてきましたが、人口減少社会においては「量の拡大」よりも「質の向上」がより重要になります。
とりわけ、町民が「暮らしに満足している」「まちに誇りを持っている」「将来も住み続けたい」と感じることは、地域の持続性に直結します。玄海町においても、豊かな自然や地域資源、コミュニティの力を活かしつつ、町民の幸福度を高めることが新しい政策の方向性として求められています。
そのため、従来の経済・人口・財政指標に加えて、住民の生活実感を測るWell-Beingを評価に組み込むことが必要です。
■どのように計画に反映するのか
計画や戦略に掲げる施策の効果を、従来の数値指標に加えてWell-Being指標を用いて検証します。これにより施策が実際に住民の暮らしや幸せの実感に結びついているかを明らかにします。具体的には、町民アンケートや行政データを用いてWell-Beingを定期的に測定し、その結果を計画の進捗評価などに反映します。これにより、「町民の声に根差したPDCAサイクル」を構築し、町民と行政が協働してより良いまちづくりを進める基盤とします。
Well-Beingの指標について
■Well-Being指標とは
Well-Being指標とは、町に住む人が「しあわせ」や「豊かさ」をどのくらい感じているかを数字やデータで可視化したものです。単に人口や経済の大きさだけではわからない、暮らしの質や満足度を確かめるために使われます。
■なぜ導入するのか
人口の増減やお金の動きといった数字だけでは「町民が安心して暮らせているか」「住んでいて誇りを感じられるか」等の町民がどのように感じているかまでは分かりません。そこで玄海町では、人口の多さだけを目標にするのではなく、町民のみなさんが「この町に住んでよかった」と感じられる暮らしを目指すために、この指標を導入します。
■どのように活用するのか
Well-Being指標は、町の計画の進み具合や成果を確かめる「ものさし」として活用します。具体的には、住民アンケートの結果を参考に、次の施策や事業に生かしていくことで、「数字の目標」だけでなく「町民のしあわせ実感の向上」を大切にしたまちづくりを進めていきます。
■Well-Being指標における評価方法
玄海町みらい計画の進捗や成果は、このWell-Being指標を用いて評価します。
具体的には、定期的に住民アンケートなどを実施し、各要素に関する満足度や重要度を測定します。その結果をもとに、政策の効果や改善の方向性を把握し、次の施策につなげていきます。
また、人口動態といった従来のデータも組み合わせることで、住民の実感と客観的な現状の両面から総合的に評価する仕組みとします。これにより、単なる「数値目標の達成」だけでなく「町民のしあわせ実感の向上」という両方の視点から成果を測ります。
主観(ウェルビーイング)評価指標 ~ 全50問
地域における幸福度・生活満足度(4)
- 現在、あなたはどの程度幸せですか?
- 現在、あなたの町内(集落)の人々は、大体において、どれぐらい幸せだと思いますか?
- 現在、あなたの住んでいる地域の暮らしにどの程度満足していますか。
- 自分だけでなく、身近な周りの人も楽しい気持ちでいると思う
生活環境(16)
- 医療・福祉(2)
- 医療機関が充実している
- 介護・福祉施設のサービスが受けやすい
- 移動・交通(1)
- 公共交通機関で好きな時に好きなところへ移動ができる
- 買物・飲食(2)
- 日常の買い物に全く不便がない
- 飲食を楽しめる場所が充実している
- 住宅環境(3)
- 自宅には、心地よい居場所がある
- 【逆】自宅の近辺では、騒音に悩まされている
- 適度な費用で住居を確保できる
- 子育て(2)
- 子育て支援・補助が手厚い
- 子どもたちがいきいきと暮らせる
- 初等・中等教育(2)
- 教育環境(小中高校)が整っている
- 通学しやすい場所に学校がある
- 地域行政(2)
- 地域の行政は、地域のことを真剣に考えている
- 公共施設は使い勝手良く便利である
- デジタル生活(2)
- 行政サービスのデジタル化が進んでいる
- 仕事や日常生活の場でデジタルサービスを利用しやすい
- 公共空間(2)
- 地域の雰囲気は、自分にとって心地よい
- まちなか、公園、川沿い等で、心地よく歩ける場所がある
- 都市景観(1)
- 自慢できる都市景観がある
- 事故・犯罪(2)
- 防犯対策(交番・街燈・防犯カメラ・住民の見守り等)が整っており、治安がよい
- 歩道や信号が整備されていて安心である
- 自然災害(1)
- 暮らしている地域では、防災対策がしっかりしている。
- 遊び・娯楽(1)
- 楽しい時間を過ごせる娯楽施設がある
- 自然景観(1)
- 自慢できる自然景観がある
- 自然の恵み(2)
- 身近に自然を感じることができる
- 暮らしている地域の空気や水は澄んでいてきれいだと感じる
- 環境共生(1)
- リサイクルや再生可能エネルギー活用等、環境への取組みが盛んである
地域の人間関係(2)
- 地域とのつながり(5)
- 私は同じ町内に住む人たちを信頼している
- 地域活動(自治会・地域行事・防災活動等)への市民参加が盛んである
- 困ったときに相談できる人が身近にいる
- 町内の人が困っていたら手助けする
- このまちに愛着を持っている
- 多様性と寛容性(5)
- 町内にはどんな人の意見でも受け入れる雰囲気がある
- 私は見知らぬ他者であっても信頼する
- 私は、町内(集落)の人が自分をどう思っているかが気になる
- 女性が活躍しやすい
- 若者が活躍しやすい
自分らしい生き方(6)
- 健康状態(2)
- 身体的に健康な状態である
- 精神的に健康な状態である
- 文化・芸術(2)
- 文化・芸術・芸能が盛んで誇らしい
- 将来生まれてくる世代のために、良い環境や文化を残したい
- 雇用・所得(2)
- やりたい仕事を見つけやすい
- 適切な収入を得るための機会がある
- 教育機会の豊かさ(1)
- 学びたいことを学べる機会がある
- 自己効力感(1)
- 自分のことを好ましく感じる
- 事業創造(1)
- 新たなことに挑戦・成長するための機会がある
■Well-Being指標の因子群とカテゴリー
「Well-Being指標」は、町の暮らしやすさを多角的に把握するために、複数の分野で構成されています。例えば、健康、仕事や生活の安定、教育や学び、地域の絆、自然環境や安心・安全といった視点を取り入れています。
こうして分けていくことで、町民の暮らしを細かく見える化でき、課題や良いところが分かりやすくなります。
Well-Being指標は、地域における幸福度・生活満足度を計る4つの設問と、3つの因子群(“生活環境”、“地域の人間関係”、“自分らしい生き方”)から構成され、因子群は合計24のカテゴリーに細分化されます。
■Well-Being指標の全体構成
町の政策とその政策の効果として現れる町民の幸福感を結びます。主観指標と客観指標を同じ因子構成とすることで主観と客観の紐づけを簡素化し、因子間の関連から注目すべき因子を抽出できます。
アンケート調査の平均値を幸福度と生活満足度のスコアとし、主観指標のスコアは、アンケート調査および全国のスコアを用いて測定し、客観指標はオープンデータおよび全国のスコアを用いて偏差値(平均50)として測定します。
出典:2024年度版(令和6年度版)Well-Being個別調査_佐賀玄海町
