ご高齢の方やそのご家族には認知症を心配されている方も多いと思いますが、患者さんが体調不良になった際に、物忘れが急に悪化することがあります。この場合「せん妄」という状態になっていることが多く見られます。
せん妄は軽度の意識障害に様々な精神症状が伴う状態であり、体の病気や環境の変化などをきっかけに、脳の働きが一時的に乱れて起きます。特に高齢の方、入院中の方、手術後の方、重い病気のある方に起こり易いと言われています。せん妄は成人の入院患者の約4人に1人に認められ、珍しい病気ではありません。認知症とは異なり、数時間〜数日で急に始まることが多いのが特徴です。症状としては、注意力が低下し、時間や場所が分からなくなります。また不安が強くなり、落ち着かず、怒りっぽくなる場合や、逆に眠ってばかりになる場合もあります。さらに幻覚、妄想が出現する場合もあります。体の不調、薬の影響、環境の変化などが直接の原因となっていることが多いです。
せん妄は本人の性格や気持ちの問題ではなく、誘発している原因があり、それを改善することにより、異常行動や物忘れが改善する可能性が高いです。急に物忘れがひどくなったと思ったときは、認知症が悪くなったと決め付けず、せん妄の可能性も視野に入れ、まず原因を探ってみてください。周囲の方は、ご本人が不安を持たないようにお話をよく聞いてあげてください。対応に困られた場合には、主治医や認知症ケアチーム、精神科医などにご相談ください。
かみいち総合病院
神経精神科医長
大口 善睦
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