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新春知事インタビュー

令和8年の幕開けにあたり、今年の県政のビジョンや抱負などについて、静岡朝日テレビの石田和外さんが聞きました。

幸福実感向上を目指し自治体組織の変革へ

石田 就任二年目となる令和7年を振り返って、どんな一年でしたか。

知事 昨年は9月に発生した台風第15号により、県中部・西部地域を中心に甚大な被害を受けました。被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。日本で初めてという巨大な竜巻が発生しましたが、そういった自然災害にどう対処していくかも含め、知事として県民の皆さまの生命・財産を預かる責務を強く感じる一年でした。

石田 静岡県は「幸福度日本一の静岡県」というキーワードの下、ウェルビーイングの視点を取り入れています。改めてウェルビーイングについてお聞かせください。

知事 ウェルビーイングは「身体的、精神的、社会的に全てが満たされた状態」を表す概念で、世界の国々や都市が人々のウェルビーイングを中心に据えた政策を実施しています。静岡県でもウェルビーイングを基本的な考え方として取り入れ、県民の幸福実感を重視した県政運営を進め、「幸福度日本一の静岡県」を達成しようと考えました。昨年、国の地域幸福度指標を用いて県民アンケート調査を行ったところ、県民の幸福実感は全国平均よりも高いという結果が出ました。調査により明らかになった本県の特徴を踏まえ、本県の強みはより強く、弱みはしっかりと補強していくことで県民満足度の向上に取り組んでいきます。

石田 県政運営に関してLGX(ローカル・ガバメント・トランスフォーメーション)というキーワードを掲げています。また「巧遅より拙速」という印象的な言葉で取り組みを語っています。県政はどう変わっていきますか。

知事 LGXは私の造語で、自治体変革、自治体変容を意味します。今までの自治体の考え方や組織体質、前例踏襲主義を変革し、時代の変化に対応して新しいことにチャレンジしていく。役所の殻を破って大きく変革をさせていこうというものです。「LGX宣言」として県職員に共有し、新たな静岡県の組織としてチャレンジしていこうとしています。「巧遅より拙速」は「拙速」を多少荒くてもスピード感を重視するという意味合いに捉え、就任以来スピード感を持ってさまざまな施策を進めてきました。LGXが浸透し、変化が現れてくるのには時間がかかるかもしれませんが、県を環境の変化に柔軟かつ迅速に対応できる組織へと変革してまいります。

石田 財政健全化という大きなテーマに向き合っています。現状をどうお考えですか。

知事 県の財政は今、非常に厳しい状況です。歳入より歳出が多い状況が何年も続いており、資金手当債(赤字地方債)を発行してやりくりしています。1300億円以上にも積み上がった資金手当債残高は、このままでは将来世代への大きな負担となってしまいます。この状況を改善し、本県財政の持続性を確保するには、歳出入を均衡させる、いわゆる「プライマリーバランス」を一致させる必要があります。昨年は全ての事業についてサマーレビューを行い、費用対効果や実績など客観的データなどによる評価の結果、不要不急の事業は縮小する取り組みを行いました。引き続き、この見直しに取り組むとともに、長期的に改善させる道筋をつけていきたいと思っています。

静岡県知事 鈴木康友

新たな産業活力の創造と静岡ブランドの確立

石田 スタートアップ支援に力を入れています。手応えはいかがですか。

知事 全県で盛り上がってきていると感じます。本県産業を支える企業の育成には、国内外のスタートアップが持つ革新的な技術やアイデアを県内企業と融合させることが重要です。すでにコミュニティをつくり、外からスタートアップ企業を誘致したり、既存企業との連携によって新しいイノベーションを起こそうとしています。東部・中部・西部全域にキーマンはいますし、素晴らしい企業やスタートアップもあるので、今後も行政だけでなく民間の皆さまとも力を合わせて、全県で盛り上げて静岡の産業を飛躍発展させていこうとしているところです。国内外のスタートアップと県内企業とのマッチングを図るイベント「TECH BEAT Shizuoka」では、全国のみならず国外からも有望なスタートアップが集まりました。年々規模も拡大し活性化しています。今後もこうしたイベントなどを活用し、スタートアップの誘致や成長に向けた支援を行ってまいります。

石田 昨年は荒茶の生産量が全国首位陥落という、県民にとっては残念なニュースもありました。本県の主要産業であるお茶を、これからどう復活させていきますか。

知事 お茶は量もさることながら、質と付加価値をいかに高めていくかが大事だと考えます。本県は山間地や台地など限られた場所で茶業を営んでおり、栽培規模や生産性の違いがありますが、その上で全国からここにお茶が集まり、マーケットが築かれます。静岡が茶生産の中心であることは間違いありません。これから静岡のお茶を今一度再生していくためには、やはり時代の変化に対応した取り組みが必要です。静岡茶はさまざまな産地のお茶の味わいを楽しめる一方、海外から見ると特徴が分かりにくく、あまり知られていないということもあります。緑茶の輸出拡大や魅力を伝えるために大事なのはやはり静岡茶のブランディングです。昨年より、世界に通用する静岡茶のブランド化に向けて、世界で活躍する佐藤可士和氏を総合プロデューサーに迎え、茶業関係者とともに「共に創る」静岡茶ブランディングプロジェクトを開始しています。静岡茶ブランドのコンセプトを正しく伝えるための象徴として、ロゴマークなどを含めてブランディングしているところです。ブランドを確立して海外に打って出る準備を着々としています。

再生可能エネルギー等の導入と循環型社会への取り組み

石田 再生可能エネルギーやCO2削減、循環型社会をどうつくっていきますか。

知事 脱炭素社会実現に向けて、2050年にカーボンニュートラルを目指すという国の大きな目標があり、本県は「第4次静岡県地球温暖化対策実行計画」に基づく施策に取り組んでいます。全国トップクラスの日照量を誇る本県は、再生可能エネルギーの導入拡大として、全域で太陽光発電の導入をけん引してきましたが、導入適地が減少しています。そこで今、注目しているのが、ペロブスカイト太陽電池です。形状が変えられて、例えばビルの壁面などこれまで設置できなかったところに導入できるため、耐風圧や塩害環境下での耐久性の実証を行っているところです。もう一つは省エネです。ものづくりの盛んな本県ですが、事業者が排出するCO2の削減には、産業界も一緒になった取り組みが求められています。中でも中小企業等のサプライチェーンでCO2削減が義務となる時代が来ます。中小企業に寄り添った設備導入支援などを行ってまいります。

石田 全国的にも注目されてきたリニア中央新幹線について、これまでの県の取り組みと現状を教えてください。

知事 就任当初から、大井川の水資源やアルプスの自然環境をしっかり守りつつ、リニア新幹線を推進するという基本方針の下で取り組みを進めてきました。県が整理した「水資源」「生物多様性」「トンネル発生土」の3分野28項目の課題については、現時点では13項目の議論が終了しました。今は「生物多様性」「トンネル発生土」について残る15項目の課題解決に向けて対話を進めています。それらを一つ一つクリアできるよう、スピード感を持って対応してまいります。大井川流域の皆さまは、水資源の課題はクリアしたものの今後トンネル工事によって将来何か起こる可能性があるのではないかという一抹の懸念、不安があるかと思います。それらを払拭するためには、万が一の場合の補償に関する文書を締結することが不可欠です。今後も流域市町の意見を踏まえつつ、JR東海や国との調整を進めてまいります。

次世代モビリティの導入促進と地域交通のリ・デザイン

石田 令和7年に開催された大阪・関西万博で、「空飛ぶクルマ」のデモ飛行が行われ、静岡県でも話題を呼びました。現状の受け止めと、今後の展望を教えてください。

知事 いよいよ現実味を帯びてきたと感じます。大阪・関西万博でデモ飛行をしたSkyDriveの工場が県内に立地しているほか、大型商業施設内に離着陸場が整備されました。また、観光が商用運航の初期の利用用途と言われる中、富士山をはじめとする観光資源に恵まれている本県は、導入に高いポテンシャルがあります。一方で、国の規制方針が垂直離着陸できる機体の特性に即していないとの声があることから、合理的な制度整備が進むよう、ルールメイキングの段階から国に働きかけ、早期の社会実装を目指していきます。

石田 少子高齢化や人口流出による過疎化の影響で、バスやタクシーの利用が困難な交通空白の地域が生まれています。本県で展開している公共ライドシェアについて、市町をどう支援していきますか。

知事 交通空白と言われる地域で暮らす人たちの足の確保には、自治体やNPOなどによる「公共ライドシェア」や住民同士の支え合いで行う共助型交通、いわゆる「共助版ライドシェア」が有効な手段であると確信しており、これを持続可能なシステムとなるよう、県内各地への普及・展開に取り組んでいます。県の地域公共交通活性化協議会にライドシェア専門部会を作り、市や町を支援する体制を整えたことで、県内各市町では実証運航などの動きが着実に広がってきました。今後も、昨年連携協定を結んだ、専門的知見を有する団体である全国自治体ライドシェア連絡協議会と連携し、好事例の情報提供やアドバイザーを派遣するなど、市町に伴走ながら導入促進を図っていきます。

こども・子育て支援の充実に向けた「こどもまんなか社会」への取り組みと医療人材の確保

石田 人口減少が叫ばれる中、本県の少子化対策とこどもまんなか社会の実現に向けた取り組みについてお聞かせください。

知事 1975年に出生率が2を切って以来、50年間出生率は減り続けています。そんな中、自治体に求められているのは、人口が減っていく前提で社会の仕組みを縮小させ、いかに活力ある地域をつくり、人々が豊かに暮らせるかではないでしょうか。こどもまんなか社会の実現については、これまであまり施策に反映されてこなかったこどもや若者の意見を聞くためのオンラインプラットフォーム「こえのもりしずおか」を開設しています。今年度は、全庁で活用を進めるとともに県内10市町で計画策定などにかかる意見聴取で活用いただいています。これからもこうしたこどもや若者の「こえ」を計画や施策に反映してまいります。

石田 医師不足も深刻な問題になっています。

知事 本県は「医学修学研修資金」を設けるなど医師不足解消に積極的に取り組んでいますが、数そのものよりも深刻なのは「医師の偏在」です。若手医師がキャリア形成できる仕組みが重要と考え、浜松医科大学や順天堂大学とも協力して、指導体制の充実に向けた取り組みを進めています。今後、キャリアを積むことで安心して地域に定着してくれることを期待しています。

外国人の受け入れと多文化共生社会の構築

石田 多文化共生社会の実現に向けたビジョンについてどうお考えですか。

知事 人口減少が進む中、活力ある社会をつくっていくには外国人材の活躍が不可欠です。一方で、その生活支援や共生のあり方が全国的な課題となっています。本県にも約12万人の外国人が住んでいますが、今後はエッセンシャルワーカーはもちろん、高度外国人材のようなさまざまな外国人が活躍できることが、これからの日本が活力ある社会をつくるために必要であり、多文化共生の取り組みをより一層加速させたいと考えています。守ってもらうべきルールは守っていただくということは当然です。まずは外国人の明確な受け入れ方針をしっかり国が定める必要がありますので、昨年、全国知事会の外国人の受け入れと多文化共生社会実現プロジェクトチームのリーダーとして、「外国人の受入と多文化共生社会実現に向けた提言」を取りまとめ、政府に対して要請を行いました。相互理解の下、日本人、外国人問わず全ての県民の皆さまが安心して活躍し、誰もが輝ける共生社会づくりに全力で取り組んでいきます。

静岡朝日テレビアナウンサー石田和外

地震をはじめとした防災の推進

石田 南海トラフ巨大地震をはじめとする激甚災害について、県の防災対策を教えてください。また県民にどんな防災意識を求めますか。

知事 防災に対する想定や知識は常にアップデートが不可欠です。県でも地震被害想定について約10年ぶりとなる見直し作業を進めております。例えば、能登半島地震後には半島防災が注目されました。近年発生したこうした災害を教訓にしつつ、本県の行動計画「地震・津波対策アクションプログラム」に孤立集落対策など具体的な対策を反映していきます。県民の皆さまには、まず自分の命を自分で守る「自助」、そして「共助」「公助」を基に「わたしの避難計画」を作成し、普段からいざというときの行動をあらかじめ決めておいていただくことをお願いいたします。

石田 令和8年、知事としてどんな一年にしたいですか。また県民へのメッセージをお願いします。

知事 令和8年は静岡県が誕生して150周年となる節目を迎えます。県民の皆さまが、郷土である静岡県を誇りに想い、笑顔溢れる日々を重ねていけますように、私は次の100年、その先の未来を見据え、県政を力強く、推し進めてまいります。末筆となりましたが、皆さまにとって新しい年が健やかで実り多きものとなりますよう、心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

※POTETO Designが試験的に収集しています。品質に配慮していますが、お気づきの点があればこちらからご連絡ください。

目次


県民だより2026年1月号

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発行日2026-01-01

世界へ挑む静岡茶

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交通事故ゼロへ!自転車のルール、今一度確認を

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祝!静岡県誕生150周年

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新春知事インタビュー

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進む!静岡県のスタートアップ支援

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情報ひろば

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しずおかメディアチャンネル

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2026年に予定されている催しなど(抜粋)

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「しずおか高校生探究フェスタ」を開催します!

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静岡県が誇る魅力ある“食”が結集

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